枝折の径に花の萌ゆ

新人作家・中村汐里による雑記。

【日記】林檎の香りを想像する五日間

今日は日記。

 

夫が今日から来週の火曜まで青森まで行くことになった。

時世を考えると厳しいものがあるが、運送業なのでやむを得ない。

安全に帰ってきてほしい。

 

いま、夫不在の我が家を守るにあたり、私にはそこはかとない不安がある。

私と夫とは付き合い始めてから15年、結婚してからは14年になる。

そのあいだ、離れて過ごした時間は非常に短い。交際早々に同棲を始めたこともあり、よほどの事情がない限りは毎日一緒にいたからだ。

1週間以上顔を見なかったのは、交際3ヵ月目に法事で夫親族が遠方に集まったときと、夫が異動で隣県に移らなければならなくなったときだけだ。

どちらも婚前の話で、それからは長くても3日あれば家に帰ってきてくれる生活だった。出産で入院していたときもほぼ毎日病院に来てくれていた。

夫がいない日が5日も続いて、穏やかでいられる自信はあまりない。

もっとも、画面通話をしようと思えばできるのだから、顔を見せてくれと言えば応じてくれるだろう。だがそういう問題ではない。そこにいないと思うと落ち着かないのだ。

子どもたちの手前、そんな気配を出すわけにもいかないのだけれど、出発前にさんざん泣き言を零したのをすでに聞かれてしまっている。

娘も息子も「お母さんはお父さんがいないとへろへろになる」と勘付いている。情けない話なのだが……

 

そんなわけで、今回の夫の青森出張で、私が日頃から家族みんなにべったり甘えていることが露呈してしまった。

それを許してもらえていることに感謝しつつ、夫不在の週末を乗り越えて(私にとってはそれくらい厳しい感覚なのだ)週明けには笑顔で迎えたいと思う。

子どもたちが食べたい料理の材料を買い出しに行って、一緒に作って、写真を撮って夫に送ってもいい。羨ましがられたら、帰ってきてからまた作って夫にも食べてもらえばいい。

そしてお土産に林檎のお菓子とお酒をねだるつもりでいるので、その味わいを想像しながらのんびり待つことにしよう。