枝折の径に花の萌ゆ

新人作家・中村汐里による雑記。

「信用」と「信頼」の違いとは

小学4年生の息子に「信頼」と「信用」ってどう違うの? と訊かれた。

曲がりなりにも作家を名乗っている以上、そういった質問には颯爽と答えてやるのが理想なのだが、残念なことに私では確固たる答えを導けなかった。

なので子ども向けの国語辞典で調べてもらった。ちなみに小学館のものである。

 

【信頼】

信じて頼りに思うこと。

 

【信用】

疑わないで信じること。信頼できると評判の良いこと。

 

なるほど? ニュアンスを緻密に汲み取る必要がありそうだ。

国語辞典によると「信用」の範疇に「信頼」が含まれているが、信頼をさらに深めたものが信用ということになるのだろうか。

せっかくなので、私が持っている学研の類語辞典でも調べてみた。

 

【信頼】

相手を信じてたよること。

 

【信用】

間違いないと信じて受け入れる。

 

なるほど。なんとなくわかってきた。

「信頼」はそれ自体は単一方向の「信」、「信用」は双方向の「信」ではないか?

頼る側が信じれば、頼られる側も基本的には相手を信じるだろう(詐欺などの場合は除くが)。だがそこには心象のラグがある。同時に互いを「信用」からスタートできるわけではなく、それぞれの「信頼」から始まるのかもしれない。

いつ「信用」に変わるのかは人次第だろうが、多かれ少なかれ「信頼」の段階である時間が存在しているのだろう。その時点では相手に対する期待の裏に「背かないでほしい」という思いが存在しているようにも思える。

その点を考えると、「信用」における「疑わない」「受け入れる」という点は非常に大きな要素ではないだろうか?

これは「信頼」には記載されていない内容だ。猜疑心を持たずに相手を認め合えている状態は、信じる力がより強くなっている印象を受ける。これこそが双方向の意思にあたると私は考えた。

 

これらを踏まえて「信頼」と「信用」の違いを画的にイメージ化してみた。

「信頼」は向かい合って握手しながらも、どこかまだ探り合う雰囲気を互いに背中に隠している。笑顔こそ浮かべつつも「期待を裏切らないでくれよ」という本心がかすかにある。信じるという行為にまだ努力の色が滲んでいる。

それに対して「信用」は完全に背中を預け合う状態だ。自分の視界に入らない背後を相手に任せられると互いに思っている。振り返りもしないし笑いもしない。その必要がないからだ。

このように考えると、違いがよくわからなかった言葉もまったく違うものだということがよくわかる。

息子が疑問を持って問いかけてくれなかったら考えもしなかったろう。いい機会を与えてくれた息子に感謝しつつ、このイメージを小学生にも理解しやすく伝えたいところだ。

息子が好きそうな作品のキャラクターに例えるのが手っ取り早いが、さて息子はなにが好きだったかな……アニメも漫画もあまり触れてなくて把握できてないな……

なんて言ってるうちは、親子間の信用がまだまだということ。精進したいところだ。