枝折の径に花の萌ゆ

新人作家・中村汐里による雑記。

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑩

『殻割る音』という作品の舞台裏について語るのは今回が最後だ。

今回は、私の執筆環境について少しだが記したい。

日本おいしい小説大賞への応募に向けて、初めて長編小説を書こうとした私が使用したエディタを紹介する。

 

当時、私は執筆のすべてをiPhoneで行っていた。

複数のアプリを使い分け、プロットから印刷用pdfの発行までスマホで済ませた。

私が使ったアプリを以下に挙げておく。

 

・デフォルトでインストールされていたメモ帳

・文字数カウントメモ

・縦式

・Word

 

もっとも使用頻度が高かったのはデフォルトのメモ帳だった。

世界設定、プロット、本文はすべてメモ帳に書いた。章ごとに分け、バックアップとして全体をまとめたものも用意した。修正するたびに全文のメモも更新していた。

単純な文字入力以外に使った機能は検索のみだった。全文のメモ内で単語を検索し、表記ゆれのチェックを行っていた。応募の時点で慎重に表記ゆれチェックをしておいたことが、のちに編集さんを通じた改稿作業を少しは楽にしていたのかもしれない。

 

続いて「文字数カウントメモ」

 

miraku.dev

 

こちらのアプリは、章ごとの文字数確認および第二のバックアップとして使った。

章によって文字数バランスを大きくばらつかせたくなかったので、それを意識する意味でも「文字数カウントメモ」は役に立った。

このアプリとは5年ほど前に出会った。その当時私は在宅ライター業をしていたのだが、規定の文字数内での文章作成がしやすいアプリを探していた。そしてこの「文字数カウントメモ」をTwitterのフォロワーから教えてもらったのだった。

視覚的にも感覚的にも使いやすく、カテゴリ分けも便利だ。今でも文字数確認をしたいときにはお世話になっている。

 

続いてこちらの「縦式」

 

tateshiki1966.blogspot.com

 

このアプリは縦書きで文章を作成できるので、スマホでも原稿の視覚的なイメージを広げることができる。「縦式」は応募の直前、最後の最後で大活躍してくれた。

私は「縦式」を人名へのルビ振りで使用した。当初はWordでルビ振りを試みていたのだが、入力する際に行間隔が壊れて頭を抱えていたのだった。「縦式」ではルビを入れてもズレがなかったのがありがたかった。

さらに、応募用のpdfも「縦式」で作った。規定に沿った行数文字数でエクスポートし、そのままプリントアウトできたので手軽だった。

原稿用紙の形式で出力もできるので、原稿用紙換算枚数を確認するのにも役立った。

さすがに今はWordを最低限使えるようにはなった。だが当時はWordと分かり合えないと真剣に思っていたので本当に助けられた。

もちろん現在もお世話になっている。iPhoneのホーム画面には、すぐアクセスできる位置に「縦式」を設定している。紹介しきれないほど便利な機能が目白押しな上に使いやすいので、多くの人におすすめしたい。

 

これらのアプリがなかったら、応募にこぎつけていなかったかもしれない。つまり『殻割る音』が世に出ていなかった可能性があるのだ。大袈裟な話ではなく。

当時「パソコンで小説を書こう」という考えは驚くほどに薄かった。

どこからどう見てもスマホ中毒だった私にとって「スマホで書こう」の方が自分のスタイルにしっくりきていたし、滞ることもなかった。

小説がスマホで書けるという実体験を得られたことで、執筆のハードルも下がったように感じる。

今でこそパソコンに向き合ってWordで本文を書くようにはなったが、プロット作りはまずスマホのスタイルは変わっていない。スマホにもWordをインストールしているし、自分の使いやすいやり方でアプリを併用するスタイルは今後もしばらく続くだろう。

 

『殻割る音』にまつわる話はここまで。

今後も思い出したらまた少し話すこともあるだろうが、思ったよりも多くを語ってしまったなと思っているのでもうないかもしれない。

ブログを通すと饒舌になりがちだ。原稿は遅筆なのに。

今後もなにかしら書いていくつもりだ。思考の整理に使う可能性もある。

お付き合いいただける方には、今後もよろしくお願いしたい。