枝折の径に花の萌ゆ

新人作家・中村汐里による雑記。

2021-01-01から1年間の記事一覧

【食べきれない】中村汐里生誕記念プリンフェスティバル

ご無沙汰の更新。 元気に生きておりましたよ。 先月半ばに誕生日を迎えていた。 毎年ホールケーキを買っていたが、今年はその代わりにやりたいことがあった。 家族の協力もあって実現できたので記録を残しておく。 その様子がこちら。 中村汐里生誕38周年の…

駆け出す夏のプロローグ

帰りのバスを逃した。 次のバスまでは15分。 私はその場で黙って待てる性格ではない。ましてや日射しの下、日傘もないのに立っているなんてまっぴらだ。 15分でなにができる? 巡らせた思考は脳を一周する前に答えを導いた。すぐそばにある、昔なじみの店の…

「ワイルド」と「ハウスキーピング」の関係から見えるもの

先日、息子がトーストに豪快にかぶりつき、パンくずが盛大にまき散らされた。 その様子を見て、後片付けが面倒だなどと感じている最中にふとした考えがよぎった。 ワイルドな振る舞いと家事の相性は基本的にすこぶる悪い、と。 当たり前のことだろうとは思い…

なにを書こうかわからなくなっている

かなり長いこと更新をサボっている。 書くことがなくなったというわけでも、飽きてしまったわけでもない。 なにを書けばいいのかわからなくなってしまっている。 自分の中にある引き出しを探ればなにかは見つかるのだろうが、もうずっと頭にもやがかかってい…

『殻割る音』後日談スピンオフSS『Dolce.ホイップの溶ける温度』

先日、ローカルテレビ局の番組で「おいしい小説大賞」の特集が組まれていたらしい。 報せを受け、おいしい小説大賞で「同期」と呼び合っている作家仲間の数人と企画を打ち出した。 「おいしい小説SSを募って、Twitterに投稿しよう」というものであった。 話…

沈丁花が終わった

近所に沈丁花を植えているお宅がある。 4月下旬の頃は、通りかかるといい香りがしていて心を和ませてもらっていた。 特に風のない深夜がよかった。行き交う通行人や車がほとんどない時間帯に、その場に立ち込める花の艶やかな香りを密かに楽しむのが好きだっ…

【日記】母の日は憂鬱

昼に起きたらダイニングのテーブルに一輪のカーネーションがあった。 冷蔵庫には大好物のプリンがあり、手紙のメモが貼りつけてあった。 干しておいた洗濯物が子どもたちによって取り込まれていて、次の洗濯を回して姉弟で干すのもやってくれた。 ありがたい…

「信用」と「信頼」の違いとは

小学4年生の息子に「信頼」と「信用」ってどう違うの? と訊かれた。 曲がりなりにも作家を名乗っている以上、そういった質問には颯爽と答えてやるのが理想なのだが、残念なことに私では確固たる答えを導けなかった。 なので子ども向けの国語辞典で調べても…

【終末戦争】きのことたけのこと、それを遠巻きに眺める者

人々はなぜ争うのか―― 令和の時代になっても争いは止まない。争うことでは解決しないと知りつつも、それでも声を上げずにいられない人間たちを私は何人も見てきた。 今回のテーマとして取り上げる「きのこたけのこ戦争」は、数ある争いの中でももっとも激し…

【美味】ソースと油と肉汁が染みた白飯を掻き込む幸せ

福井の『ヨーロッパ軒』は良い。 丼から溢れそうなカツを蓋に移してから食べるものらしい。シンプルながら飽きの来ないおいしさでぺろりと食べてしまえる。 ソースがどこかひと味違うと思ってはいるものの、その味の秘密には辿り着けていない。自宅でヨーロ…

【美味】果汁滴るアップルパイ!青森土産の『気になるリンゴ』が本当に気になる

ブログの継続を習慣化させないとすぐサボることがよくわかった。 毎日更新は大変だなぁと感じている。他人事では困るのだが。 ネタがないことには書けないので、ここ数日自分が書けそうな話について考えていた。 その結果、おいしかった食べものや飲みものの…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑩

『殻割る音』という作品の舞台裏について語るのは今回が最後だ。 今回は、私の執筆環境について少しだが記したい。 日本おいしい小説大賞への応募に向けて、初めて長編小説を書こうとした私が使用したエディタを紹介する。 当時、私は執筆のすべてをiPhoneで…

【おいしい】好きなお酒のこと

今日は小説と全く関係ない話を少し。 私はお酒が好きだ。そこそこ飲める。 自分がどこまで飲めるのかは大学生時代に試して把握した。日本酒なら4合が限界点だった(楽しい酒の場合だが)。 さすがにこの歳で大荒れする飲み方はできないので、理性を保てる範囲…

ペンネームのこと

今日はペンネームについて。 私のペンネームは3つ存在する。 以前ブログで書いた静岡市民文芸にて名乗った「風吹柳花」 第1回日本おいしい小説大賞に応募した当時に使った「深町汐」 おいしい小説文庫より『殻割る音』を出版する際に改めた「中村汐里」 Fか…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑨

ブログを更新しました 『殻割る音』の登場人物のモデルについて #はてなブログ

【日記】林檎の香りを想像する五日間

今日は日記。 夫が今日から来週の火曜まで青森まで行くことになった。 時世を考えると厳しいものがあるが、運送業なのでやむを得ない。 安全に帰ってきてほしい。 いま、夫不在の我が家を守るにあたり、私にはそこはかとない不安がある。 私と夫とは付き合い…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑧

また一日あけてしまった。 引きこもりがひとりで遠くに出かけたので、やることをやったような気分になってブログに手をつけないまま夜を迎えてしまったのだった。 今後、短くてもなにかは更新していけるように心がけたいとは思っている。 前回は章タイトルの…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑦

今日は『殻割る音』の各章につけた章タイトルについて触れたい。 登場人物と舞台の設定がいよいよ固まり、さあ書き始めるぞ……というところで私はまたもやブレーキを踏むこととなった。発進もままならない初心者マークのもどかしさに、自分のことながらじりじ…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑥

一日休みをいただいた。 今日からまた『殻割る音』の楽屋トークを再開する。 軸となる主人公たちの輪郭は決まった。 次に考えるべきは物語が繰り広げられる舞台だ。さて、彼女たちはどんな場所で暮らしているだろうか? 真っ先に思い浮かんだのは私自身が暮…

【日記】万年筆をいただきました

今日は創作の舞台裏を休んで日記を少々。 高校時代からの親友が出産で里帰りをしているので会いに行った。出産祝いを渡すつもりで訪ねたところ、あちらでは私への出版祝いを用意してくれていた。ありがたく頂戴して開けてみると、素敵なカラーの万年筆だった…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑤

『殻割る音』の主人公「室本さくら」に自身と娘の姿を投影したことで、単なる少女の成長譚には新たな要素が組み込まれた。 母娘の心を描き、繋ぐというものだ。 「さくら」のディテールを固めた私は、次に重要な登場人物の形成に取りかかった。 それが「さく…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで④

オムレツ作りの練習をする我が娘の姿にヒントをもらい、私は小説の構想を組み上げていった。 料理をしたことがない少女がひとつの料理を作り上げる物語で大筋は固まったが、それだけでは日記帳にしかならない。小説とはそういうものではない、それくらいはさ…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで③

叔父の死をきっかけにペンを執った私は、初めて書いた短編小説で地元コンクールの市長賞に選ばれた。 自分と家族のために書いた作品が評価されたことで、わずかながらも手応えと自信を手に入れた。そしてまた新たな小説を書いてみたくなっていた。 やっても…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで②

自著『殻割る音』は出版社を通じて文庫本となり、書店に並んだ。 その状況に置き去りにされていたのは、ほかでもなく私自身だった。 夢見心地というよりは疑心暗鬼に近い心持ちのまま、私は「作家」と呼ばれるポジションに立ってしまっていた。 実感を抱けな…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで①

意気揚々と始めたブログが早くも滞った。 なにを書いたらいいのか。私に語れることがあるのか。誰に求められているのか。 こうしてキーボードを叩いている今もまだよくわからずにいる。 考えすぎて動けなくなる癖はなにをしていても付きまとう。 それでも始…

第一歩を踏み出すのに一週間かかった。

こんにちは。中村汐里(なかむら・しおり)と申します。 はじめましての方ははじめまして。 ご存知頂いている方は、いつもお世話になってます。 どなた様もよろしくお願いします。 中村汐里とは何者か、ざっくりお伝えします。 2020年12月に『殻割る音』とい…