枝折の径に花の萌ゆ

新人作家・中村汐里による雑記。

舞台裏

『殻割る音』後日談スピンオフSS『Dolce.ホイップの溶ける温度』

先日、ローカルテレビ局の番組で「おいしい小説大賞」の特集が組まれていたらしい。 報せを受け、おいしい小説大賞で「同期」と呼び合っている作家仲間の数人と企画を打ち出した。 「おいしい小説SSを募って、Twitterに投稿しよう」というものであった。 話…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑩

『殻割る音』という作品の舞台裏について語るのは今回が最後だ。 今回は、私の執筆環境について少しだが記したい。 日本おいしい小説大賞への応募に向けて、初めて長編小説を書こうとした私が使用したエディタを紹介する。 当時、私は執筆のすべてをiPhoneで…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑨

ブログを更新しました 『殻割る音』の登場人物のモデルについて #はてなブログ

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑧

また一日あけてしまった。 引きこもりがひとりで遠くに出かけたので、やることをやったような気分になってブログに手をつけないまま夜を迎えてしまったのだった。 今後、短くてもなにかは更新していけるように心がけたいとは思っている。 前回は章タイトルの…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑦

今日は『殻割る音』の各章につけた章タイトルについて触れたい。 登場人物と舞台の設定がいよいよ固まり、さあ書き始めるぞ……というところで私はまたもやブレーキを踏むこととなった。発進もままならない初心者マークのもどかしさに、自分のことながらじりじ…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑥

一日休みをいただいた。 今日からまた『殻割る音』の楽屋トークを再開する。 軸となる主人公たちの輪郭は決まった。 次に考えるべきは物語が繰り広げられる舞台だ。さて、彼女たちはどんな場所で暮らしているだろうか? 真っ先に思い浮かんだのは私自身が暮…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで⑤

『殻割る音』の主人公「室本さくら」に自身と娘の姿を投影したことで、単なる少女の成長譚には新たな要素が組み込まれた。 母娘の心を描き、繋ぐというものだ。 「さくら」のディテールを固めた私は、次に重要な登場人物の形成に取りかかった。 それが「さく…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで④

オムレツ作りの練習をする我が娘の姿にヒントをもらい、私は小説の構想を組み上げていった。 料理をしたことがない少女がひとつの料理を作り上げる物語で大筋は固まったが、それだけでは日記帳にしかならない。小説とはそういうものではない、それくらいはさ…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで③

叔父の死をきっかけにペンを執った私は、初めて書いた短編小説で地元コンクールの市長賞に選ばれた。 自分と家族のために書いた作品が評価されたことで、わずかながらも手応えと自信を手に入れた。そしてまた新たな小説を書いてみたくなっていた。 やっても…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで②

自著『殻割る音』は出版社を通じて文庫本となり、書店に並んだ。 その状況に置き去りにされていたのは、ほかでもなく私自身だった。 夢見心地というよりは疑心暗鬼に近い心持ちのまま、私は「作家」と呼ばれるポジションに立ってしまっていた。 実感を抱けな…

『殻割る音』という名の卵が孵るまで①

意気揚々と始めたブログが早くも滞った。 なにを書いたらいいのか。私に語れることがあるのか。誰に求められているのか。 こうしてキーボードを叩いている今もまだよくわからずにいる。 考えすぎて動けなくなる癖はなにをしていても付きまとう。 それでも始…